2018,05,25, Friday
どうもまきのです。 前回のSDシリーズでPC-9801実機にてSD-510Cを動かしてみようという試みをしました。 動いたには動いたのですが、まあ実際には微妙という感じになってしまいましたが。 その後もSDシリーズのリサーチを続けてきた結果、とうとう本格的なSDシリーズであるSD-421Eが入手できましたよ! WACOMの源泉にこうしてまた一つ近づいてきましたな!! 前回PC-9801で動かしたSD-510CはSDシリーズ全般で言えば例外扱いとなっています。 板面を薄くするために演算ユニットを外付けとして、 板面→演算ユニット→PC本体 という経路を経て処理されることになります。 その一方でSD-210/SD-31x/SD-32x/SD-42xはタブレット本体(板面)に演算ユニットを内蔵している一般的な製品構成なのでSD-510Cに比べれば圧倒的に板面に厚みがあります。 SD-421EはSD-510Cと比較するとかなりの厚みがありますね。 SDシリーズはSC-510C以外は電源を内蔵しています。 正確にはAC電源の3Pコネクタが出ています。これが後継のUDシリーズとは一番の違いと言えるでしょう。 SD-420/421の後継モデルとなるUD-1212Rと比べると結構厚みが違いますねー さらに直近で一番厚いと思ったIntuos4 ExtraLage PTK-1240なんかと比べてもかなりブ厚いですね。 PTK-1240はガチ運用を前提に手に入れたのですが、現物はかなりの厚みがあるので使いにくくて運用を断念したという経緯のものですが、それすら鼻で笑えるくらいな厚みがSD-421Eにはありますね。 でもまあ、SD-510Cから始まったA5タブレットの系譜は薄さ重視ですからね。それらに比べればプロユースタブレットの業務用然とした筐体にはある種の貫録を感ぜずにはいられません。 とはいえこれはひどい(笑) 当時はそんなもんだと思うしかなかったので明らかに後出しジャンケン的な視点なのですが、それでも現代のタブレットとも比較対象にできるレベルなのですから、それはそれですごい事なのではないかと思います。 SD-421Eは厚みもありますが、前述のAC電源のケーブルが本体根本から生えているというのが本体性能以上の問題だったりしますがそれは後述します。 今回入手したのはSD-421Eなのですが、SD-420Eと何が違うのでしょうか。 前回のカタログによると通常のシート(白)と静電シート(黒)の違いのようです。 SD-421Eは静電シート付きのモデルらしいです。 静電シートとか、どんな意味があるのでしょうかね? それはですねー ネットでSD-421Eのマニュアルを見ると、これがすごい機能なんですよ!! なんとこの本体側面にある静電気発生スイッチ(笑)によって、静電気で紙を吸いつけられるんですよ。 うわーすげー。 「んなアホな(笑)」と思っていたのですが、実際に紙を置いてみてスイッチを入れたら本体を横にしても逆さまにしても紙が落ちてこないんだから驚いたよまったく。 マニュアルにオーバーレイシートの説明みたいなところがあって、そこにこの部分の説明がありました。 ちなみにオーバーレイシートは3種類あって、通常のシートと静電シート、そして透明なシートの下に紙を挟めるもので、これは後のUDシリーズでの標準となるものです。 こんな古いタブレットにこんな先進的な機構が実装されているんだからビックリもしますよ。 デジタイザによる図面入力では使うのでしょうが、実際の図面の上でデジタイザを動かすのはやっぱり汚れとか擦れとかが気になるってことでしょうね。 ボクの記憶ではUDシリーズには継承されず下に紙を置ける半透明のオーバーレイシートになってしまったので、つまりそういう事なのではないかと。 ペンは何故か2種類ついてきました。 SD-510Cにも付いていた赤バンドのペンと青バンドのペンです。 青バンドのペンが標準ストロークペン(SP-300)らしく、ペン先が沈み込みます。 赤バンドのペンはソフトタッチペン(SP-310)で、ペン先の沈み込みがソフトになっていようです。 どちらもストロークががある絵描き向けのペンですね。 さらに言うならボク向けのペンですね(Intuos3以降のバネ仕込みのストローク芯愛好家) SP-300が 500g とあり、SP-310が 300g であるので、おそらくこれがON荷重なのではないかと思われます。 後のUDシリーズでは標準ペンのON荷重が90g以下になっており、最小のライトタッチペンが30g以下という事なので、かなり重いペンだと言わざるを得ません。 ストロークがあるからこそ許されたのかも知れませんが。 SDシリーズのカタログを見ると4種類のペンが用意されていることがわかります。 標準ペン(SP-200)は既にサイドスイッチ付きになっていますね。 SDシリーズやUDシリーズでは、今日のIntuos3以降のような同じ1本ペンで芯を替えることによりストロークを替えたり描き味を変えたりといったことはなく、その描き味用のペンが用意されていいました。 時代を感じますねー そしてこれ! 芯が長い!! 芯が長いということは筆圧感知などのセンサー部分がペンの上の方にあるということではないでしょうか? 替え芯とかオプションであったんでしょうけど、結構な値段がしそうな長さですね。 この頃から恐らく芯の素材はPOM(ジュラコン)だろうと思います。 参考までに、過去ペンを分解清掃しようと思ってたら、誤って折ってしまったペンの中身がこれです。 酒飲んでやっちゃいけないことですね(涙) その昔はマザーのCPUソケットにCPUを落として端子潰したことがありましたしね(超涙) Intuos4~Pro(旧)辺りのペンではコイルが付いているあたりで位置や筆圧を感知しているのでこれがペンの上の方にあるのだろうと思われます。 コイルが2つ付いているのは、ペンスイッチとテールスイッチです。 この事件以来、ペンの分解はしないようにしていますので、今回のSDシリーズのペンを分解して確認する事はしません。 SDのペンなんてもう買い直すことができませんからね。 日々のたゆまぬネット探索により、SDシリーズに対応するWindows用ドライバを入手することに成功しました。 とはいえUDシリーズと同じWACOMⅡ規格らしいので、UDシリーズに対応しているドライバなら動かせるんじゃないかなと思ったりしています。 いや~本来ならやっぱりMacintoshの実機でやりたいところなんですがね~ でもMacの機種選びですごく悩んでしまいますね~ 理想はLC475とかPowerMac6100とか薄く小さいのがいいんですけど、そういうのは人気が高く価格ももちろん高いですからねー。 まあそういうことで、Windows 2000環境のPCで動かしてみます。 全然やんけ。 最近ではシリアル→USB変換ケーブルなどがありますが、そもそもこのマザーにはまだシリアルポートが存在しています。 なので、今回はSD-421Eをそのまま接続してみましょう。 そもそもSD-421Eは本体で電源が自給できるので、UDシリーズのケーブルをACアダプタを付けずに接続します。 規格上ほぼUDシリーズと同じっぽいので、ケーブル挿せばそのまま通信できるんじゃないでしょうかねえー(適当) 後でRS-232Cのピン配を調べてみたところ、まあ当然ですがUDシリーズと信号線は全く同じでした。UDシリーズではSDシリーズで使われていなかった所(8pin)にAC電源を追加していますので、UDシリーズの接続ケーブルをそのまま使うことができます。 まーそんな感じだと思ってましたけどー 前回みたくPC-9801とか特殊な機械(笑)で動かすわけではないのですから、多分問題ないでしょう。 ディップスイッチもWACOM II規格で動かす設定になってるみたいですし。 Windows 2000が稼働するPC環境を動態保存していてよかったですね。 歴代Photoshop企画でも使っていたPentium4 3.0GHz(Prescottコア)という非常に懐かしCPUがのっかっています。 2000年代前半の最新機種でしたが、この業界で20年落ちのPCはもはやクラシックというかレトロPCに足を突っ込んでいるといっていいでしょう。 2000年代中盤にその保管場所の問題より発展した断捨離思想が蔓延った時期に古いPCやソフトの多数を清算してしまったりしたので、今になって改めてネットオークションなどで大枚をはたいて買い戻したりしている次第です。 そんな中でこの絵描環境再現PCは結果貴重な位置づけになってしまいましたが、そのおかげで今回のWACOM歴代タブレット企画でもその希少性(笑)をいかんなく発揮することができました。 SDシリーズをWindowsで動かすにはドライバのバージョンV4.60以前が必要になりますが、冒頭の電網世界を彷徨ったっ結果、V4.52(E)とV4.60(E)を入手することができました。 ちなみにUD/初代intuos対応のドライバはV4.78-6となっていますが、このバージョンではSD-421Eは認識しませんでした。 古いドライバでのみ認識するようですね。 シリアルポートにUDシリーズの接続ケーブルでつなぎ、V4.60のドライバをインストールするとあっさり認識、本体自体もペンも正常に動いているので問題ないでしょう。 ドライバがタブレットを認識していれば動作で気には問題ない模様です。 実際の描き心地はかなり硬い感じです。 マニュアルを見ても筆圧については特に記述がないようなのですが、恐らく256階調でしょうか。 しかしこれは単なる筆圧の違いというよりもペンの傾き検出とかそういったペンの総合力の差なのではないかと思います。 ソフトタイプペン(赤バンド)はなかなか使いやすいですね。 筆圧の出方がIntuos3や4以降とは違うので、ちょっと使っただけでは想定していた線が引けないですね。 これはそのデバイスを使い慣れれば自然に解消していく問題だと思いますので、別段SDシリーズが使いにくいとかそういうことにはならないと思います。 この当時から非常に完成度の高いタブレットになっていることに驚きです。 むしろこの当時の一般的なPC環境の方が圧倒的にタブレットに追い付けていないという方が正しいかと思います。 特に日本のDOSベースのPCでは精々16色程度くらいが限度ですからねー むしろ亜流DOSであるX68kの方が32k色環境が揃っていたという・・・・・・ フルカラーで画像編集ができるMacintoshの普及までタブレットもその本当の実力を発揮することはできず、一部の好事家による利用が精々であったと言えるでしょう。 90年代前半ではまだまだMacintoshは業務用DTPマシンという位置づけでしたからね。 この完成度の高いタブレットの最大の問題点は、やはりAC電源直出しだということです。 つまりケーブルの取り回しが非常にし難いという一点です。 タブレット本体の奥にキーボードを置く一般的な使い方をしようとすると、AC電源ケーブルが非常に邪魔です。 当時はこのような使い方をしなかったんでしょうか? 後のUDシリーズで本体直結DC100Vから外付けACアダプタになったのはケーブルの取り回しの利便性を改善するためだったと考えざるを得ません。 ついでに前回のSD-510CもWindows2000マシンに接続しました。 これもこの急ごしらえの環境ではProcessorUnitが邪魔で(以下略) ところでこのマニュアルにはWACOM II規格以外の規格で動かすための設定が載っています。 Bit Pad TwoとかMM961とかMM1201とか。 調べてみるとGTCO CalComp社の BIT PAD TWOというタブレット(というかデジタイザ)とか、Summagraphics社というところのSummaSketch Plus Model MM1201というデータタブレットというモデル互換と思しき設定があります。 UDシリーズの日本語マニュアルを参照すると、このようになっています。 Bit Pad TwoとかMMなどもサマグラフィックス社(当時)のコマンド体系のスタンダードな規格だったと思われます。 ここでもCalcomp社ですかー。 GTCO Calcomp社とかつてDrawingSlate IIを製造していたCalcomp社が全く同じかどうかは現在のところ不明ですが、ともかくこの時代のWACOMは産業用デジタイザしかない世界でこのSDシリーズを投入しています。 海のものとも山のものとも知れないWACOMのタブレットは、入力デバイス(ペンが)がいくらケーブルレス・バッテリーレスとはいえ産業用デジタイザ業界ではまだまだ弱小勢力だっと言えるでしょう。 そのため他社製品との互換モードも積むという選択をせねばいけなかったのかも知れません。 この後UDシリーズまでの時代においてWACOMはグラフィックスタブレットというカテゴリを生み出し、その新しいカテゴリにおいて事実上の標準(デファクトスタンダード)に成り上がっていきます。 産業用デジタイザ方向ではUDシリーズ以後は積極的な開拓は行わず、専らグラフィックスタブレットに注力することになるのは皆様もご存じでしょう。 それ故UDシリーズ以降は人道的な大きさのタブレットのみを販売するようになっています。 SDシリーズを知ることはWACOMを知ること。 かつてのWACOMタブレットを知れば今日までのWACOMが歩んだ道がよく解る。 今回はSDシリーズを更に掘り下げることにより、WACOMの黎明期の苦労を知るよい機会になったと思います。 この時期にWACOMがグラフィックスタブレットという方向性に向かなかった場合、グラフィックスタブレットという業界が現在のような形になっていたかを考えると非常に興味深いと思います。 WACOM一強じゃない方が業界による競争が起こってより良い製品が安く提供されることになったのか? それとも各社廉売による疲弊により業界自体が衰退してしまうのか? ここまで絵描き人口が急増することにならなかったのか? そんなことを考えるとちょっと絵描きテクノロジー研究家的な感じになってしまいますね。 つうかこんな駄文書いてないで絵を描けよ、と。 いつものことですが。 それではまた!
| ヲタク::PCとか | 11:47 PM | comments (x) | trackback (x) |
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