2013,10,27, Sunday
まきのです。 古来、PC世界における「タブレット」とは現在で言うところの「板タブ」のみを指す言葉でして、最近急速に絵描きに浸透しつつある「液晶タブレット(=液タブ)」はまだ業務用(主に医療向けなど)で使用されているに過ぎず絵を描くための性能すらままならなかったのです。 それが1990年代においてPCで絵を描くという行為が一部のPC好きによる趣味の段階から、商業作品に耐えうる品質、及び制作機材が普及に耐えうる価格に下落したのに合わせて、PC好きによるCG制作から、特にPC自体に興味はないが絵を描くためにPCを使うというアナログ絵描きの多数を取り込むことになります。 その黎明~発展期に主に絵描き入力デバイスとして用いられたのが「板タブ」です。 MS-DOS全盛時代には、PCの性能上タブレットから入力するのは珍しく、Macitoshなどの高級機種に限られていました。 一部の高級機種以外のPCで絵を描くのはマウスによる入力が大勢を占めていましたが、90年代後半のOSのGUI化(Windows)に伴うPCの性能向上により旧来の高級機種において使用されてきた絵描きで使用されるソフトウェアやデバイスが低価格帯のPCでも利用できるようになってきました。 2000年代に入ると液晶技術の革新によって、大画面のモニタが安価で量産されるようになります。 90年代後半からCRTの大画面化が進み、それとともにCRT筐体自体も肥大化することになっていきました。絵描き界隈ではLCDモニタの色の再現性について懐疑的であって、LCDの普及に否定的なCRT至上主義がはびこっていました。 しかしPC世界のトレンドには抗しえず世のPCのモニタはLCDに代わっていきます。 そして絵描きデバイス的にも革新的な「液タブ」が登場します。 冒頭にも書いた通り、90年代末期既に業務用の液タブは存在していたようですが、コンシューマ向けには高嶺の花といった状態でした。 そして2000年になってWACOMからコンシューマ向けにギリギリの価格でPL-500という液タブが発売されました。 当時最新のタブレットintuosが筆圧512レベルなのに対してPL-500はUDシリーズと同様の256レベルという一世代前の技術でしたが、それでも液晶に直に描ける液タブがどうにか手に届く範囲内で実現できるという希望を覚えました。 そしてこのPL-500とほぼ同様の仕様が(OEMとして)SONY VAIO LX(PCV-LX)シリーズに搭載され市販されたの事は、液タブというものの存在を大きく世間に知らしめるのに十分だったのではないでしょうか。 PLシリーズ以来、WACOMでは液晶タブレットにCintiqというブランドネームでクリエイター層向けに販売拡充を行っていきます。ちなみに業務用はDTIとかDTUとかいう系統みたいです。 このCintiqブランドはWX/UXシリーズを経てHDシリーズや今日のTouchシリーズにまで発展してきました。 この間、Cintiqシリーズは従来の液晶モニタ型の筐体と今日のタブレット的な小型化、薄さを求めるという相反したモデル展開を行っています。 それは現行モデル展開(22/24HD・13HD)がクリエイター向けとはいえそれぞれ違ったターゲット(プロ向け・趣味向け)を狙っているということなのでしょうか。 さて。 今回はそのクリエイター向け最高峰の液タブWACOM Cintiq24HD Touchを購入してしまいました。 アキバのヨドバシまで行って。 本当はamazonとかネット通販でもよかったのですが、あまりに現物を見たことがないというかそれ程意識して見ていなかったのでどんな感じのものなのかもう一度認識してから導入検討をしようという意味合いでわざわざアキバのヨドバシまで来ました。 宇都宮のヨドバシには22HDしか置いてないんですよね(笑)。でも置いてあるだけ素晴らしいよ!。 つーことで先日台場まで付き合ってやったyann氏に今度はアキバまで付き合ってもらいます。 実はアキバのヨドバシでなくともソフマップでも実機の展示は行われているのですが、ヨドバシは何故かネット上で店舗在庫が解るシステムなので、実機が置いてあり尚且つ在庫があるというヨドバシへ。 2FにあるPCデバイス売場には展示機出し過ぎじゃね?と思う程にWACOMコーナーの島がありますね。 そこでまず最初に見た印象。 24HDデカっ!。 でか過ぎねえ?。 これヤバいよマジヤバい。 部屋に置くスペースないちゃうの?。 これは人道的に問題ありそうな大きさじゃね?。 わざわざ在庫のあるアキバのヨドバシまでクルマで来てるだけに買う気満々だったけど、この非人道的な大きさを見てたじろぎました。 少々頭を冷やすためにアキバのジャンク屋や薄い本屋さんなんかをフラフラしながら気分転換をしました。 ですがそろそろ日も暮れてきて帰らないといけない時間になってきたので、最後にまたヨドバシの2Fで逡巡しました。 そして意を決して店員に価格がネットと違うんじゃねすかね、ととっかかりのジャブを打ち、ついでに在庫の有無を確認。在庫があるというのでそのままお買い上げまで持っていきました。 これは……危険な賭けだっ!。 会計を済ませて持ち帰りの旨を伝えると、その現物が現れました。 24HDの梱包箱はかなりデカい、とネットの方々で言われていたのですが、この現物を見るまではかなりその噂を過小評価していたようです。 (ちなみにボクが主に見ていたのは24HDの梱包箱でして、24HD Touchの箱は更に幅があった) なにこのバカでかさ。 オレのジムニーに載るの?。 もし乗らなかったらyann氏には自腹で電車で帰ってもらうことにしよう。 B2Fの駐車場に停めていたので、そこまでお店の人に運んでもらうことにしました。 もしオレのジムニーに載らなかったら、宅配便配送を別途頼まなければならないのでさらに余計な出費が出てしまう!。 それに本日中に現物を自宅に持ち帰るというミッションもフェイルドしてしまうわけでして。 本当はオレが運転するの面倒だったんで、交通費だけ出してyann氏のアルトワークスを駆ってもらおうとか画策していたのですが、彼曰く「俺の車じゃ高さが足らないので入らない」だそうで。 その後首都高→東北道で地元栃木まで戻ります。 自宅に到着して、後部荷室(座席を倒した)のキ○ガイくさい非人道的なデカさの24HD Touchを2Fにある自分の部屋まで運びます。 もちろん一人では無理なのでyann氏に手伝ってもらいます。そのための人足なんだもの。 狭い周り階段を箱を縦に傾けながらどうにか自分の部屋まで運びます。 40kg位ある24HD Touch梱包箱をどうにかモノを買ったその日に自分の部屋まで持ってくることができました。 今日はもう夜も更けてしまったしボク自身かなり疲れてしまったので、開梱と設置は次の日にすることにして折角人足として手伝ってくれたyann氏に仕方なくbigboyで肉食を奢ります。 翌日。 朝起きてとりあえず紅茶を入れてそれをすすりながらなんとか掲示板とかいつもの場所を巡回しながらなんとか動画とかを適当に見ながら朝のひと時を過ごしたりします。 オレの部屋にある謎の物体に違和感を覚えてしまいいつものヲタ生活ができないでいます。 その原因がこれだよ。 なんだよこの白物家電的な大きさはよ!。 アタマおかしいんじゃねーの!。 思いっきり罵倒したくなる大きさです。 このままこの物体を放っておくと殺人衝動に駆られたり思わず隣の家に放火してしまうかもしれませんので、このオレの部屋の中で一際違和感を放つ物体をどうにかしようと思います。 ってことでCintiq 24HD Touchの開梱。 開梱を始めて。 なにこれ。 ディスプレイが斜めの状態で梱包されてるし!。 オレ、実は液晶盤面とアームが分離していて、自分で組み立てるもんだと思っていたんですよ。あーよかった、組み立てなくて。 まあそれでも本体がどうにも重くて、机の上に乗せるのにかなり苦労しました。 流石は26kg位あるだけあるな!。 机に乗せてみると画面は24Wインチながら、左右のトラックパッド部分なんかがかなりデカいので、実際は32Wインチ相当のデカさだと思います。 辛うじてメインモニタの手前に置くことのできた状態。 画面の大きさはほぼ同じながらも左右のトラックパッド部分でかなり尺取ってますね。 だいたいアキバのヨドバシの売り場で非人道的な大きさだ、って即買いを躊躇ってしまっただけに、自分の部屋に実際置いた時の衝撃と言ったらもう……一際酷いものです。 こんなクソデカいもの大枚はたいて買ってきて、どうすんのオレ。 新しいソリューション導入に対しては基本的に前向きなはずなのですが、今回のCintiq 24HD Touch導入に関しては何故かポジティブに考えにくいんですよ。 どうしてもこの実物の大きさがね……。 ここまで来てやっと現実的な運用の課題と向き合います。 今のPC環境はメインPCと絵描きPCは同一であって、それ以外にAV用PC(テレビ見たり動画見たり音楽聞いたりアナログ絵描きの参考用)という2台体制にまでリストラクチャした結果なので、ここでもう一台絵描き専用PCを増やすのはどうしても避けたいところです。 常時デュアルモニタ環境は維持したかったのですが、机の上の空きスペース的には無理なのは目に見えているので、断腸の思いでこれまで使っていたFlexScan S2410W-Rにはその位置をCintiq24HD Touchに譲ってもらうことにします。 26kg位あるので動かすにはかなり重いのですが、どうにか動かすことができるようです。 絵を描くときに正面に持ってきて、絵を描かないときは右側によせる。 なんだかすごい圧迫感ですが、とりあえず実現できそうです。 キーボードとかマウスとかintuos4とかの配置や配線がかなりヤバい気がしますが。 普段はあまり使わないモニタの配置をこまめにいぢらなければならなくなりましたね。 とはいえ常時Cintiqを映しているわけにはいかないので、絵を描かない時はCintiqを使わないようになると思います。 これまで約10年以上続けているデュアルモニタ環境からシングルモニタに戻るというのはかなり難しい話、絵を描かなくてもある程度の頻度でCintiqには直接使わないにしても映ってもらう必要があるかもしれませんね。 Cintiq 24HDと24HD Touchはタッチパネル対応か否かだけの変更ではないようです。 AdobeRGBの対応率(92%→97%)とか、キャリブレーションに対応やDisplayPort接続だと10億7374万色とか途方もない色が表現できるらい、などが挙げられます。 AdobeRGBカバー率が上がっているということは、パネル自体が24HDから変更でもされているのでしょうかね?。 まあそういうわけで配線を接続して使ってみます。 うわキモっ。 目の前にクソデカい画面がありますよ。 24インチって、30~40cm離して見ている分にはそれ程デカく感じませんが、こう目の前に置かれるとかなり広大な画面領域だったんだなと改めて感じることができます。 更にトラックパッドやらファンクションボタンやらの領域が左右に張り出しているので、実際は32インチモニタくらいの大きさが眼前に広がっているのですからね。 この圧倒的な存在感は店頭ディスプレイで味わったものよりもより強烈ですね。 これで……絵を描くのか?。 マジでそんな疑問を覚えるくらいの迫力です。 添付のドライバCDからインストールすのは面倒なので(笑)、最新ドライバをWACOMのHPよりダウンロードします。 まあインストールはいつものような画面なんでアレですね、特に何の感慨もないというか。 ちなみにCintiqとintuosは併存できるようです。 出来なきゃ困るんですが。 CG集の編集作業なんかはPhotoshopを使いますが、都合に応じて他のソフトも立ち上げますし、液晶タブレットをわざわざ使う必要がない作業ですし、そもそもキーボードが近くにないと困るわけなので、絵描き実務作業ではない事に関してはやはり板タブも必要になってくるわけでして、複数のデバイスに対応しいるのは基本中の基本かと思われます。 さて、これまでボクはintuos4で何故か標準から外れたデバイスIDを好んで使用してきたのですが、よく考えてみるとCintiqではそんなデバイスIDとか多分対応してないだろうな、と思っていたのですが、予想通りデバイスIDには対応していませんでした。 WACOMさんひどいっす!。 株主として抗議します!。 デバイスIDなんてほぼ死に設定じゃないですか!。 仕方ないのでペンの種類だけの種別で使うことします。 今回のCintiq 24HD Touchに標準添付しているペンを合わせてグリップペンやアートペンを合わせて5本目になってしまいました。 というかintuos4とCintiq 24HD Touchは同世代の技術なのでintuos4のペンとCintiqのペンには互換性があります(あとIntuos5も同様)。 それなのでこれまで使ってきたintuos4のペンをそのまま使います。 個別のIDでの判断ができないので使えなくなったペンがありますが、まあそれはそれで予備としてとどめておこうという感じにしておきましょうか。 標準ペンが都合4本もあるってどういう環境なんだよ。 ええと。 24HDはかなり幅が広いので本体盤面の上にキーボードやトラックパッドや左手デバイスを両面テープなどで固定して使っている方が多くみられます。 ボクはとりあえずのところ、左手デバイス(RazerNostromo)とマウスを本体の両脇に置いて使っています。 左手デバイスをほぼ持ち続けて描いているので、24HD本体中心よりやや左側に寄って作業していると思われます。 マウスはBridgeから画像を呼び出すとかそういう時に使うだけですので、頻繁には使いませんので。 Cintiq盤面上部には本体制御系のボタンなどが配置されていますが、ここにソフトウェアキーボードのボタンがあります。 これを押すとソフトウェアキーボードが画面に出てくるので、ちょっとしたキー入力(レイヤ名変更とか)ならこれでいいや、と思わせてくれます。 人によってはキーボードを頻繁に使う(ショートカット含む)から小型のキーボードを盤面に置いたり張り付けたりして使っている方がいるというのは先ほど書いた通りですが、これはCintiqというデバイスをどう利用したいか、という方向性によってそのカスタマイズは変わってきます。 3DCGやCAD目的なら当然ながらコマンドやパラメータ入力が頻繁になるわけでして、キーボードがあった方がよいとなりますし、ボクのように左手デバイスで通常操作は問題ないから、よりダイレクトな描き味を目当てだと、本体にそれ程架装する必要はないのかも知れませんし、また運用スペースによっては固定運用のために他の入力機器も近くにないと困るという人も出てきます。 デバイス(機器)を使用目的に沿って自分流にカスタマイズしていく、というのがPCの自作などに通じる醍醐味なのではないでしょうか。 液晶タブレットのウィークポイントである追従性の悪さと画面の端に近くなると酷くなるポインタと描画点のズレなのですが、もちろんこのCintiqにも継承されています。 イクミたん氏は素直な操作性を求めているらしく液タブ特有の動作が苦手なようですが、ボクとしてはそれ程鼻につくような挙動ではないと思います。 最もボクもかつてのVAIO LXシリーズを購入して絵描きに使っていたりしたので、そういう意味では液タブ特有の動きをある程度経験しているということを記しておきます。 実際にCitinq 24HD Touchで通常業務(単なる絵描きですが)を行った感想。 ・画面がデカイ。しかも一部分しか使ってない?。 →板タブだってそんなもんなんじゃないかな。 ・左手デバイスが遠い。 →RazerNostromoの配置を再考する必要はありますね。貼り付けるとか?。 ・筆圧が板タブよりも弱くなってしまうようで、ベタ塗りにムラができる。 →最近自分の描き方が筆圧が低い方向にシフトしているので、それがより増幅されて出てきた感じ。筆圧設定で対処するしかない?。 ・やっぱ実体キーボードがないと…… →ソフトウェアキーボードがデカすぎるので使いにくいというのは間違いない事実です。 ・液晶保護フィルムは必要か? →フィルムを張るとツルツルになるようなので、描き味保全のためには貼らない方がいいかも?。 ・ショートカットキーが足らない!! →キーボードを直接使用しない環境のため、保存(Ctrl+s)とかカット(Ctrl+x)・ペースト(Crtl+v)・全範囲選択(Ctrl+a)などよく使うショートカットをコマンドバーから選択しなければならなくなったので、この点については明らかに作業効率は落ちます。 Razer Nostromoのキーにはほぼ全部に何かしらの操作が割り付けてあるので、Nostromoもそろそろ限界になりつつあるのかも知れません。Razer Orbweaverあたりの導入検討もしてみた方がいいのでしょうかね?。 …っとCintinq 24HD Touchの導入の感想について書いてきましたが、ぶっちゃけこんな大層なモノが絵描きに必要なのか?、と問われれば間違いなく否と答えられます。 このようなハイエンド絵描きデバイスは絵描きの効率化には高々数%くらいしか貢献しないと思っています。 液タブならよほど板タブでの絵描きが苦手な人が使えばそれなりの効果が得られると思いますが比較的安価な13HDにしても価格が価格ですし、24HDシリーズに関してはほぼ固定化された専用環境を構築せざるを得ないという代物ですので全くの業務用機器といえるでしょう。 その高々数%の効率化だとしても、常に納期カツカツで仕事をしているプロの作家などにとっては喉から手が出る程欲しいものだったりするわけでして、少しでも制作効率が良くなるのなら多少の導入費用くらいはどうにでもなるという層向けだと思っています。 ボク?。 まあ単なる業務用機器に憧れる趣味の散財レベルですかね。 Cintiqに制作環境が変わったからって絵が見違えて上手くなるとかまずないですからね(笑)。 <iframe 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| ヲタク::PCとか | 12:01 AM | comments (x) | trackback (x) |
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